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なぜGemini 3.6 Flashは誤回答が頻発したのか?1週間で改善された理由を解説

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公開 2026-08-14

Gemini 3.6 Flashはリリース直後、誤答が相次ぎ「ポンコツ」と酷評されました。しかし、わずか1週間後には同じ質問への誤答が消滅しました。

通常AIモデルの仕組みが短期間で変わることはなく、この現象には別の要因が存在します。本記事ではこの1週間の変化を振り返り、原因や改善理由を考察します。

Gemini 3.6 Flashがリリース直後に不安定に

Gemini 3.6 Flashがリリースされた直後、SNSでは同モデルの出力に対する失望の声が相次ぎました。今後の検証の前提として、当時ユーザーやメディアから報告されていた具体的な「誤答」の事例を振り返っておきましょう。

代表的なものは、以下のようなケースです。

数値比較の誤答と論理の破綻

「9.11と9.3、どっちが大きい?」というシンプルな質問に対し、「9.11」と答えてしまう初歩的な計算ミスが多数報告されました。

また、ITmedia記者が7月23日に行った検証では、数値比較において「9.13が大きい」と回答した直後、それに続く説明文の中では「9.3のほうが大きい」と記述するなど、1つの回答内で論理の破綻が確認されました。

架空の生物のハルシネーション

ユーザーが創作した「存在しない魚」について質問したところ、実在の生物であるかのように、学名や生息域、特徴まで詳細に捏造(ハルシネーション)して回答したケースが報告されています。

誤った完了報告

実装作業を指示し、確認の際に「問題ない」と回答したにもかかわらず、実際には作業が行われておらず、後になってAI自身が「ハルシネーションでした」と謝罪する事態が確認されました。


これらはいずれも、実務でAIを活用する上で致命的になりかねないエラーです。こうした具体例が急速に拡散されたことで、「Gemini 3.6 Flashはポンコツである」という印象を持つ人が多くいました。

擁護の声も存在

一方で、すべてのユーザーが酷評していたわけではありません。モデルの特性を理解し、擁護する声も一定数存在していました。

特に評価されていたのは、その「レスポンスの速さ」です。「計算や論理的思考には向かないが、処理速度は抜群に速いため、タスクを選べば十分使える」という実用的な意見や、「とにかく早く大量のテキストを出力できるので、ブレインストーミングや発想の案出し用としては優秀」といったポジティブな評価も上がっていました。

良くも悪くも「速いが、正確性には波がある」というのが、リリース直後の全体的な評価だったといえます。

1週間後には改善

リリース直後は「ポンコツ」という評価が目立ったGemini 3.6 Flashですが、リリースから約1週間が経過した頃、SNS上で騒がれていた「誤答」が、同じように質問しても再現しなくなっていたのです。

ITmediaの記者が7月28日に再検証を行った記録によると、「9.11と9.3」のような数値比較の質問に対し、同モデルは正しい回答を出力するようになっていました。さらに、小数点以下を8桁に増やすなどの引っかけ問題を試みても、確認できた範囲ではすべて「正答」したと報告されています。


また、架空の魚についての質問も同様です。7月23日および28日の検証時点では、すでに騙されることなく「実在しない」と正しく回答できる状態になっていました。

ただし、すべてが完璧になったわけではありません。コーディングの際の細かなミスや、一部のハルシネーションに関する報告は、7月28日時点でも依然として継続していました。つまり、完全に別次元の賢さを手に入れたわけではなく、特定の「初歩的なミス」だけが消えていたのです。

しかし、一般的に公開されたAIモデルの重みが、たった1週間でサイレントアップデートされ、別物に書き換わるようなことはありません。では、モデルの重みは同じであるのに、AIの正答率が上がったのはなぜか。以下の見出しで解説します。

Gemini 3.6 Flashの不具合はなぜ起きた?

答えは、思考の深さの設定にあります。

Gemini 3.6 Flashは、どのサービスから使うかによって、既定の設定が異なります。

項目 Geminiアプリ/ブラウザ版 Google AI Studio
想定利用者 一般ユーザー 開発者
モデル切り替え 可能(Fast / Thinking / Pro) 可能(明示選択)
思考の深さの切り替え 可能(モード切替が思考量の切替を兼ねる) 可能(Minimal〜Highを明示指定)
既定値 Fast(最も思考を絞った状態) 指定が前提のため、既定という概念が薄い
思考量の可視性 見えない。無料枠は「基本アクセス(変動)」とのみ表記 見える。指定した値がそのまま適用される

表を見ると「有料でないと深く考えさせられない」わけではありません。違うのは、既定値の置かれ方です。

アプリは最も思考を絞ったFastが既定であり、しかもその絞り具合はユーザーから見えません。モード選択の存在を意識せずに使えば、自動的に「最も浅く考えるGemini」に当たります。SNSで誤答を報告した人の多くは、この状態で質問していたと考えられます。

ここに、評判とベンチマークが食い違う理由があります。ベンチマークのスコアは思考を絞っていない状態で測られ、世間の印象は絞られた状態で作られています。

同じ「Gemini 3.6 Flash」という名前でも、事実上別の製品として動いていたため、賢いといわれているはずのモデルでハルシネーションが起きたといえるでしょう。

まとめ

Gemini 3.6 Flashのリリース直後に起きた「ポンコツ」騒動の正体は、モデルの能力不足ではなく、システム側で制限された「思考の深さの設定」が原因でした。1週間で誤答が減ったのは、これが密かに調整されたためです。ここから、「発表されたモデル名と実際の性能は必ずしも一致しない」という教訓が得られます。

同モデルは圧倒的な処理速度を持ち、思考モードを「high」にしたりAPI経由で推論設定を最適化したりして十分な思考予算を与えれば、実務でも強力な武器になります。

最新AIを導入する際、SNSの評判や初期設定の挙動だけで判断するのは危険です。AIの進化が著しい今、スペックに一喜一憂するのではなく、背後にある設定の仕組みを理解し、ポテンシャルを適切に引き出すリテラシーこそが、今後のビジネスにおける真の競争力となります。