生成AIの業務効率化の事例を探しても、自社にそのまま使えるものは多くありません。なぜなら、会社ごとに業務量や体制の前提が違うからです。「AIで業務を効率化してほしい」と上司に言われても何から手をつければいいか分からないという方も多いでしょう。
そのときは、頻度と定型度という2つの物差しを用いることで、自社に合った使い方が見えてきます。
他社の生成AI事例を真似しても自社では機能しにくい
生成AIで業務効率化に成功した企業の事例を読んでも、自社にそのまま当てはめられなかったという経験がある人は多いでしょう。事例で紹介される業務は、その会社の業務量や体制を前提にしています。同じツールを使っても、自社の業務の頻度や定型度が違えば、同じ効果は出ません。
導入する前に投資対効果の全体像を把握しましょう。他社の事例を1つ真似るのではなく、自社のどの業務に生成AIを当てはめるべきかを、自分たちで見立てる必要があります。
判断の軸は「頻度」と「定型度」の2つ
判断の軸はシンプルです。ひとつは頻度、もうひとつは定型度です。
頻度
頻度は、その業務がどれくらいの回数発生するかを指します。毎日や毎週発生する業務なら、少しの時短が積み重なって大きな効果になります。年に数回しか発生しない業務では、同じ改善をしても効果は限られてしまうでしょう。
定型度
定型度は、判断の仕方が毎回似ているかどうかです。同じ手順やパターンで対応できる業務ほど、AIに任せたときの精度がぶれにくくなります。反対に、その都度状況が変わる判断は、AIに渡しても人の確認が欠かせません。
生成AIの業務効率化事例が多い仕事
事例を部署ごとに集めるより先に押さえておきたいのが、業種や部署を問わず多くの会社に存在する業務のパターンです。よく紹介される生成AIの業務効率化事例は、次の6つが挙げられます。
文書・資料作成(総務、営業、管理部門)
報告書や提案書、議事録、メール文面のドラフト作成などです。ゼロから書く時間がなくなり、叩き台のレビューに作業が変わります。
情報収集・要約(企画、調査、営業)
競合調査や社内資料の要約、議事メモの整理などです。大量の資料を読む時間が圧縮され、要点の把握が早くなります。
データ集計・レポーティング(経理、経営企画)
売上集計やKPIレポート、定例報告資料の作成などです。毎回手作業でやっていた集計やグラフ化が自動化され、分析に時間を回すことができます。
顧客・問い合わせ対応(営業、カスタマーサポート)
よくある質問への一次回答や社内ヘルプデスク対応などです。一次返信をAIが担い、人は判断が必要な問い合わせに集中することができます。
社内ナレッジ・マニュアル整備(人事、総務)
業務マニュアル作成や新人オンボーディング資料です。属人化していた手順の文書化や更新にかかる工数が減ります。
定型チェック・一次判断(経理、法務、審査部門)
書類や申請内容のチェックなどです。見落としがちなチェック作業をAIが下支えし、確認の抜け漏れが減ることが期待できます。以下の例を見ながら、自社に当てはまる業務がないか確認してみてください。
- 報告書や提案書の下書きに、毎回時間を取られていないか
- 競合調査や社内資料の要約に、まとまった時間を使っていないか
- 売上集計や定例レポートの作成が、手作業のままになっていないか
- よくある問い合わせへの一次対応に、人手を割いていないか
- マニュアル整備が後回しになり、担当者に聞かないと分からない状態になっていないか
- 書類のチェックや一次スクリーニングに、確認の手間がかかっていないか
AI導入で優先すべき業務の見つけ方
6つのドメインをそのまま並べても、どこから手をつけるかは決まりません。先述の頻度と定型度の2軸で位置づけると、着手する順番が見えてきます。
- 最優先ゾーン(頻度が高く、定型度も高い): 報告書のドラフトや、定例レポート集計、よくある問い合わせ対応
- 効果は大きいが設計が必要(頻度が高く、定型度は低い): 情報収集・要約や、社内ナレッジ整備
- 手をつけやすいが効果は限定的(頻度が低く、定型度は高い): 単発の書類チェックや、年数回の資料作成
- 後回しでよい(頻度も定型度も低い): 都度性質が異なる非定型の重要判断
頻度が高く、定型度も高い業務から着手すると、少ない投資で成果が見えやすくなります。効果を数字で示せれば、社内への説明材料にもなるでしょう。
反対に、頻度が低く定型度も低い業務から始めると、効果が見えにくくなります。「AI導入は思ったほどでもない」という誤った結論に至りやすいので、最初の一歩は最優先ゾーンから選んでみてください。
まず3つの業務を書き出して自社に当てはめてみる
ここまでの内容を、自社の業務に当てはめてみましょう。まず、日常的によく発生する業務を3つ書き出します。次に、それぞれの業務が定型度の高い判断かどうかを自己評価します。この2つが揃えば、自社の最優先ゾーンがどこにあるかが見えてくるでしょう。
会社単位だけでなく、個人で仕事を請け負っている場合も、この考え方はそのまま使えます。自分が抱えている業務を3つ書き出せば、どこから効率化すべきかが同じように見えてきます。
まとめ:頻度と定型度を軸にAIで効率化しよう
AIで何を効率化すべきか迷ったときに頼れるのは、頻度と定型度という2つの物差しです。6つの業務ドメインのどこに自社が当てはまるかを見れば、着手する順番は自然と決まります。
まずは、今日中に自分の担当業務を3つだけ紙に書き出してみてください。それだけで、次に何をすべきかが具体的になります。